スタッカート


その言葉を脳が認識したとたん、頭の中で光がはじけた。

この前、部室に来たとき。
それは私が、トキに会うためにあそこに行った時の。

そして――…


パクパクと、魚のように口を開け閉めする。
顔が茹で上がったように熱くなる。


「ね、寝てたんじゃなかったの!?」

「俺、物音に敏感なんだよな」

意地悪そうに細めらた目。弧を描いた唇。


…やられた…!!


ふるふると、唇が震える。
今日は何だってこんなにも、恥ずかしい思いをする日なんだろう。

でも。だけど、それなのに。

あの時のトキの寝顔を思い出して、そういえば可愛かったななんて一瞬でも思ってしまった自分が、一番恥ずかしくて許せなかった。


「ヘンタイ」

してやったりな顔で、見下ろすかたちで言って来るトキ。


ああ、時間が戻せたなら―。


そんな叶いもしない願いを、本気で願いそうになったとき。


…意地悪そうな笑顔と一緒に、トキが言った。



「償いは?」