その日は、お昼から曇り空で。
私は念のため、折りたたみ傘を持って家を出た。

時間は余裕を持たせたつもりだったけれど、車両事故があったらしく予定が狂い、開始時間をだいぶ過ぎての到着になった。

…間に合うかな。

不安で満たされていく胸を押さえて、エレベーターに乗る。

ぐん、と重い音を立ててあがる、古いエレベーター。

一度目を閉じてゆっくりと開け、エレベーターから見える景色を眺めた。

横断歩道、信号機、行きかう人たち。
みんながみんな、それぞれの都合に合わせて道を選んで、すれ違っていく。

町並みはあの日と変わらず、何処か寂しげに光っていた。



視線を上げて階を見ると、目的地はもう直ぐで。

だんだんと強くなる鼓動を感じながら、ゆっくりと開いた扉の向こうに視線を向けた。