「……考えてみれば、あの時、俺がもし、アイツに対して偏見を持たずに、きちんと向き合えていたら、どんな小さな子供だろうが何か気付けたことだってあったかもしれない。

もっと早くに、あの場所から救うことだって出来たかもしれない。


アイツがあんなことをしなくちゃならなかった事……

俺にだって責任はあったんじゃないか」


佐伯は俯いて間を取ると、ため息とともに言葉を吐き出した。


「盗んだこと以上に、俺たち兄弟を傷つけたことが罪だと以前の俺は思っていたけど。


…そうじゃなく、本当の罪は、自分のことは棚に上げて、アイツをずっと偏見の目で見て、何とも向き合おうともせずに拒んで恨み続けて。


…あいつを傷つけた、


俺にあるんじゃないかって」


そう言葉を切ると暫く間を置き、重い息を吐く。


「それなのに、そうやっていつでも、自分は“許す”側で、アイツが全部悪くないだの、やりたくてやったんじゃないだのって……分かっていたつもりで、本当は何も分かっていなかった。


……まず初めに向き合うべきだったのは、トキじゃなく、俺自身だったんだ。」



「やっと気付いたんだ、そのことに」




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