佐伯はゆっくりと、校門前に植えられた色とりどりの花々や木に視線を流す。
「ここが、アイツの高校か…」
ぽつりと、そう呟いた。
「綺麗な学校だよね」
と返すと、真っ直ぐに目の前の校舎を見つめたまま、こくりと頷く。
緑に包まれる校舎は、夕陽を浴びてきらめく窓ガラスが眩しかった。
私はその光に目を細め、時間を確認するために、左腕につけた腕時計に視線を落とした。
4時40分。
まだ、待ち合わせの時間までは20分ある。
ゆっくり歩いて行こうと思っていたけれど、予想外に早足の佐伯についていくのに必死になっていたら、予定よりもずっと早くに着いてしまった。
これから約20分、校門で、佐伯と二人で待たないといけないのか…。
でも、さっきは軽音部の部室に連れて行って欲しいって言ってたし…あれ?
首を傾げる私の肩に、ぽんと佐伯の手が乗る。
隣を見ると、片頬が夕陽で橙に染まっている佐伯が、こちらを見ていた。
「案内してくれ。…軽音部の部室まで」

