「なんでそうなるんだよ!」
声を荒げてそう言うと、数回口をパクパクさせる。
だって、と口を開きかけた私より早く、その口が動いた。
「俺が好きなのは…!」
そこで、佐伯は何かに気付いたように茶色の瞳をはっと見開いて。再び顔を真っ赤にさせると、気まずげに顔を逸らした。
益々訳が分からなくなった私は、余計に頭の中のハテナが増えるばかりだったけれど、何となくそれ以上は聞いてはいけない気がして、小さく息を吐いて目の前に視線を戻した。
…でも、少しだけ気になった。
佐伯のタイプかあ…。
きっと、物凄く可愛くて何でも出来る子なんだろうな。
…そして気付けば無言のまま、私たちは、トキの高校の校門前についていた。

