スタッカート




それから三日が経ち、その日がやってきた。

ガチガチに固まる心臓を落ち着かせようとするけれど、体はなかなかそれについて行ってはくれず、慌てた手つきで帰り支度をして席を立つ。

すると直ぐに、背後から肩を叩かれた。


「行くか」

振り返ると、佐伯の、穏やかな目がこちらを見つめていた。


「トキの学校の、軽音部の部室の場所…分かるか?」

そう言われたのは、トキに電話をした翌日の朝のこと。
きょとんと首をかしげつつ頷いた私に、佐伯は、困ったように小さく笑った。


……たしか待ち合わせは、校門じゃなかったっけ?

なんで部室?
佐伯は…トキが軽音部だってことを知ってるの?

…だとしたら、何故?


様々な疑問が頭の中をまわる。
そんな私の頭を、佐伯は軽くポンと叩くと、じゃあ時間があるなら案内してくれ、と言い、自分の席に戻っていった。



私はただ、ぽかんと口を開け、佐伯の背を見つめていた。