トキの過去やハチさんの話を聞いてから、私はずっと、そのことを考えていた。
お節介かもしれない、迷惑なだけかもしれない。
…だけど
このまま、何もしないなんて嫌だった。
辛いときは背中を押してくれ、逃げ場所を与えてくれた、トキと、佐伯。
彼らには、本当に申し訳ないくらい助けてもらったのだ。
何か少しでも、彼らにとっていい影響を与えられるような、そんな存在になりたかった。
けれどいったい、私に何ができるというのだろう?
何になれるというのだろう?
眉を寄せ、考え込む。
私が持っているものなんて本当に小さなもので…果たして本当に、彼らにとってそんな存在になれるのか。
そう考えるととてつもなく不安になる。
そしてそんなふうに一人悶々と考え込む私の頭を、佐伯が軽く叩いた。
はっと目を見開いて視線を向けると、苦しげな表情をしていた佐伯は、いつのまにか穏やかな表情に戻り、真っ直ぐこちらを見ていた。
「伊上に、頼みたいことがある」
「……頼みたいこと?」
首をかしげた私に、佐伯はきゅっと唇を結んで小さく頷く。
「アイツに…トキに、会わせてくれないか?」

