そう言って、佐伯はきゅっと唇を噛んで。
私は、その苦しげな表情を、胸に針が突き刺さったような気持ちで見ていることしかできなかった。
膝の腕で握った掌をゆっくりと開き、また握る。
指先が氷のように冷たくて、ただ、胸が痛かった。
固まった心臓を動かすために深く息を吸い、吐くと、心臓が、またちくりと悲鳴をあげた。
……私は。
いったい、この、傷を持った人たちの何を知っていたんだろう。
何を知っていたつもりだったんだろう。
過去に縛られ、
罪に足を捕らわれ
「資格」が無いのだと
私とのこれ以上の関わりも拒んだトキ。
許そうとする心と、許せない心。
二つの心の間でまだ、答えを見つけられない佐伯。
二人の心に残り続ける傷。
……私はこの二人の、「何か」になれるだろうか。

