目を瞬かせて、眉をすこし下げてこちらを見つめてくる佐伯の顔を見る。
……ああ、そうか。
佐伯は、知らないんだった。
「清水さんとは、もう大丈夫」
そう首を振ると、佐伯は強張っていた表情を緩めてほっとしたように息を吐いた。よかった、と、小さく呟くのが聞こえた。
「すげーな。あの清水と仲直りか」
「あの清水?」
「ああ、伊上は知らないかもしれないけど……俺、アイツと同じ中学だったんだけさ、その頃からやたら気が強くて。
常に誰かが、“そういう被害”に遇ってたんだ。それはもう、精神的にギリギリまで追い詰められるような」
その言葉に、ちょっとだけ怖さで鳥肌が立ったけれど、私はしずかに首を振った。
「でも話したら、分かってくれたみたいだったから……」
「分かってくれた……って、それが凄いよな、まず。」
佐伯はそう言って笑い、でも、と続けた。
「じゃあ、何があったんだ?」

