後ろにいた人たちも、トキたちのバンドが次の曲に移る前にと次々に前に押し寄せてくる。
まるで巨大な壁が作られていくようだった。
厚さを増して、もう私の踏み込める場所なんて無いかのように。
「トキ、モテるからなあ」
隣から苦笑交じりの海陽くんの声が聞こえた。
……モテる、から。
その言葉に、一歩も場所を動いていない筈なのに、トキとの距離が遠くなっていくような気がして。
きゅうっと、胸が苦しくなる。
マイクに手をかけるトキ。
目が合う。
その表情が、微かに強張ったように見えて――
顔が、急に熱くなって。
胸の奥で、膨らんでいた熱が爆発した。

