もう一歩も、動くことなんてできなかった。
トキの歌が途切れ、ギターソロに入る。
あの魔法の指先から、次々と美しい旋律が生み出されていく。
不意に、伏せられていた目がゆっくりと上がって――
その目に捉えられた気がして、はっと息を呑んでしまう。
そしてゆっくりと切れ長の目が細められて、唇の端が少しだけ上がった。
……笑、った。
次の瞬間、周りがざわめき始めた。
「今の見た?」
「見た!笑った…」
「こっち見てたよね!?」
「やばい!格好いいーー!」
そんな声が、聞こえて。
静かに曲が終わると、大きな歓声に混じって、
「トキ!!」
と、彼を呼ぶ、女の子の声があちらこちらから聞こえた。

