「…お前が。 何か酷い目にあってんじゃねえか、とか。 どっかでまた、泣いてんじゃねえか、とか。 考えるたびに、不安になる」 ぽつりぽつりと、呟かれる言葉。 私はただ、この今が、現実か、夢か――分からなく、なっていた。 トキが、いつものトキじゃない。 「ひとりは、駄目だ」 苦しげに、搾り出すように言われたその言葉が。 私の胸に、静かに沈んでいって。 ……頬に当る夕焼けの橙が、その時は何故か、痛くて痛くて 仕方が無かった。