慌てて零れ落ちそうな涙を拭おうと、手を上げる。


……なのに


その手は、目元に辿り着く前に、トキの掌にふわりと包まれてしまった。

驚いて目を見開くと、藍色の瞳と視線が絡み合う。

さっきよりも……距離が近い。

トキのもう片方の掌が、私の瞳から零れ落ちた涙の滴を優しく拭った。

「でも、もう、ひとりで戦うんじゃねえ」

そう呟かれた、次の瞬間

こつんと肩に、黒髪の頭が乗った。

ふわりと香る、花の匂い。

「……心配、した」

切なげな、その声に

心臓が、ドクンと激しく脈を打った。