私は唖然として口を開いたまま動けなかった。

―どうしてここに?

頭の中をぐるぐると同じ疑問が回る。

「せっかく助けてやったってのに、そんなに濡れて風邪ひかれたら意味ねえだろうが」

そういって私の腕をぐいぐい引っ張っていく。
ちょっと待って、とか放して、と叫んでも


彼はそんな私の言葉を無視して、知らない町の知らない道を、人をかきわけて奥へ奥へと進んでいく。

やがて辿り着いたのは、一軒のアパートだった。



逃げ出そうとする私を無理矢理アパートの一室に押し込み、乱暴に閉めたドアの前に立つ彼は、またあの鋭い目で言う。






「脱げ。」