冷たい声だった。鋭くて、寂しげな。

聞き覚えのあるその声に、私は驚いて後ろを振り返った。

そこには「彼」が立っていた。


眉間にシワを寄せ、あの射抜くような目でずぶ濡れの私を見つめながら、真っ黒な傘をさして。


目を見開いたまま、ゆっくりと空に向かって顔をあげる。




―雨は、止んだわけではなかった。






視線の先にあったのは真っ暗な空ではなく、包みこんでくれるような真っ白な傘だった。




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