スタッカート




…それから。



トキはひとつひとつ丁寧に、私に「コード」というものを説明してくれた。

Cがドの音で、それから順にD、E、F…で、レ、ミ、ファ…と続く。

ふんふんと頷きながら、頭の中では鍵盤に置き換え、ひとつひとつをその中に取り込んでいった。


「じゃあC、E、Dで弾いてみろ」


暫く練習したあとそう言われ、教えてもらったものを必死に思い出しながらぎこちない手つきで弾く。

変な音も混ざってしまったけれども、トキは満足そうに頷いていた。


「できるじゃねえか」


そう言われて、何となく、トキとの距離が近くなったような気がして―


思わず、笑顔が零れた。


トキは小さく頷くと、足を組みなおして口を開いた。


「じゃあ、次はFだ」