トキはきょとん、として一瞬固まると、ふと視線を下げて腕に抱えたギターを見、私にそれを差し出してきた。
首を傾げると、深い藍色の瞳と目が合った。
「…弾いてみるか?」
そう言われて。
私は、無意識のうちにこくりとうなずいていた。
実際に持ってみると、予想していたよりも重く、そして大きかった。
トキはまるで体の一部のように扱っていたけれども、格好を真似して同じように抱えてみても、どうしたってしっくりこない。
今日初めて触れた楽器なのだから、当たり前なのかもしれないけれど。
それでもやっぱり、きっと同じくらいギターに触れていたとしても、私とトキは違うんだろうなあ、とぼんやり思った。
取り敢えず、適当に弦を押さえて、右手を下に流してみる。
じゃらん、と指と弦とが触れ合って、音が鳴ったけれども、
やっぱりそれは、全然綺麗な音ではなかった。

