「十年以上、一緒にピアノをやってきて、どれ程、ヒナちゃんがピアノを好きか、わかっているつもりよ。 とっても頑張りやさんで、 たくさんたくさん、ピアノを大事にしてくれて。 そんな子をね、ここでピアノから遠ざけてしまうのは… 凄く、勿体ないと思うの。 好きなときに来て、好きなだけ弾く。 それでもいいの。」 先生は、ひとつ短い呼吸をすると、ゆっくりと続けた。 「これからもずっと、弾いていて欲しいの」 そして、 本当に我儘よね と 独り言のように、呟いた。