そして早由利と老人。

(あの爺さんにはちょっと気の毒なことをしたな)

 早由利のまくしたてるように喋る姿が思い出されて、俺は一人微笑んだ。ずっと話し相手をさせられて、老人は辟易しているかもしれない。

 ちょっとでも聞いていない素振りを見せると、すぐに目を覗き込んで文句を言う癖がある。それはあの老人でも持て余すことだろう。


(沙羅と佳絵はいまごろぐっすりだな)

 両親や兄が穏やかに過ごせたことは何より良かった。きっとこのまま幸せな最期を迎えてくれるだろう。あのランドセル、実は結構良い値段だったのだ。それでも可愛い姪っ子の為なら何の躊躇もなかった。


 ひろみと侑海とパイロットたち――。

 考えて見ればあそこで侑海を助けなければ、いまここに生きていることはないのだから運命とは不思議だ。

(しかし、あの人の身のこなしは普通じゃなかったな)

 自衛隊にも特殊部隊などが存在するのならば、きっとそんな類の人だったのだろう。


 坂下と美里は最期には幸せそうな笑みを浮かべていた。

(きっと、あれで良かったんだ……)