「今度はいつ潜るの?」


 楽しそうな顔をして、ティアが尋ねて来た。


 月に一度、俺はティアと一緒に海に潜っている。

 海の中は凄くこう、何て言うか、神秘的で一度潜ったらやめられない。


「んー。来週かな」

「そう」


 にこっ。ティアは優しく笑う。

 普段は普通の女の子だけど、時々、女の人って顔をするティアに置いてかれてる気がしてならなかった。


 不安だった。だから、困らせてみたくなった。

 いつも、ティアは笑ってるから、困った顔を見てみたいと思ったんだ。















 いつもの待ち合わせ場所に行くと、ティアは眠っていた。


 ……陸で眠っていいのか?


 こんなんだからバレたりするんだって事、ちゃんと分かってんのかな。


 ん? この桜貝の首飾り…。

 確かこの前ティアが言ってた。「命みたいなもの」だって。


 これ、隠したらティア困るんだろうなぁ。──そうだ! これを隠そう!


 俺は、ティアを起こさないように首飾りを外して。簡単に見つからなさそうな所を探した。

 岩場、海中、砂浜。なかなか、良い場所は見つからない。

 そんなこんなしていると、いつの間にか、あったはずの物がなくなっていた。


「え? う、嘘だろ?! 首飾りがねぇ!」


 ずっと握り締めていたはずなのにっ。


 俺は慌てて首飾りを探し始めた。来た道をゆっくりと戻って。瞬きもせずに、足元を見て探してた。

 そしていつの間にか、ティアの元まで戻っていた。


 もう謝るしかない。とりあえず謝って、それからまた探そう。

 そう思い、ティアを見上げた。


「……え?」


 俺は、自分の目を疑った。

 ティアの体は、透けていた。そして、笑っている。


「お帰り、カイ」


 咎める様子も、怒る様子も、泣く様子もない。ただ、少しだけ寂しそうだ。