『……俺…』
俺が口を開いた途端、加奈さんの携帯が鳴り出した。
え…?
このタイミングで?
「ちょっとごめん」
加奈さんは苦笑いで電話に出る。
「……もしもし?
……うん…分かった。
今修司の家だからすぐそっち行くね…うん。
じゃあまたあとで」
電話を切った加奈さんは帰る仕度をし始める。
「新がさっきはごめん、って。
今からうち来いよって言われたから行くね。
それとお姉ちゃんに修司んちに行くように、ってメールしとくから。」
『え?!どうしてですか!』
そんな…突然、何言っちゃってるんですか。
「いや、だってキモチ、伝えるんでしょ?お姉ちゃんに。」
『……………………』
無言で俯いていると加奈さんは動かしていた手を止めた。
「さっきの修司の言いかけた言葉の続き、言おうか?
俺…フラれてもいい。
それでもいいから柚木ちゃんにちゃんと、キモチ伝えようと思います。
どう?正解じゃない?」
顔を上げると自慢げな加奈さん。
……………図星。正解。
脱帽ですよ、加奈さん。
「出し惜しみは禁物よ?
そこに溜まってるモノ、秘めてるモノ、全部、お姉ちゃんにぶつけな。」
ニヤッと笑う加奈さんは俺の胸を指さす。
「じゃ、行くね。
Good Luck(幸運を祈るよ)、修司」
加奈さんはそそくさとうちを出て行く。
そしてそこから俺の緊張は始まった。


