コガネ《短》



正直なところ、まさかここまでのめり込むなんて思っていなかった。


高校を卒業して、社会人になって、恋をして―先生と出会う前に思い描いていた「予定」は狂いっぱなしで。

今まで経験してきた恋が、すべて間違いだったような気さえしてくる。

先生と過ごす毎日の、その限られた時間が、幸せが、心の奥にぽつぽつと溜まっていく。

そして充分、満たされている筈なのに、もっと近づきたい、なんて思ってしまう。


…情けない。

こんなに振り回されているなんて。


ため息をついて、いつの間にか目の前に停まっていたバスに乗り込んだ。