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下校時間を知らせるチャイムが鳴る。


3分の2あたりまで読んだ本を片手に持ち、財布と携帯以外何も入ってないスカスカのバックを肩に下げ、カウンターに向かった。


ここからが、俺が図書館に来る本当の目的だ。


カウンターには、パソコンの前で腕を組み、珍しく居眠りをしている「彼女」が居た。

うすいピンクの縁のメガネが、俯いているせいで少し下にズレている。
寝癖なのかパーマなのかきわどいうねりを見せている色素の薄い髪が、彼女の華奢な肩にかかっている。

テーブルを挟んでその前に立ち、少しだけ身を乗り出して彼女の口元に耳を近付けると、静かな寝息が聞こえた。


自然と顔が綻ぶ。


穏やかな寝顔も
小さな寝息も。


こんなにも俺を、幸せな気持ちにさせてくれる。