先生と初めて会ったのは、部活を引退した八月。
三年生に上がった頃から、父親の知り合いの会社から声がかかっていた俺は、この工業高校で身に着けた技術を早く現場で使いたくて、この時には既にその会社への就職を決めていた。
進路も決まり、勉強も軽くする程度で毎日ダラダラと過ごす呑気な日々を送っていたとき、なんとなく寄ったのが図書室だった。
もともと本なんて全くと言っていい程読まず、引退前だと図書室が開いている時間は部活をしていた俺は、二年以上この学校に通っているのにも関わらず図書室に入るのはこれが初めてだった。
当然、司書である先生の存在なんて知らなかった。

