心の、ずっと奥

「辞めて、私は帰りたくないの!」



そう太郎に告げた瞬間、


ーーーバシ!ーーー



乾いた音が、夕焼け空に響いていく。


それと同時に、私の頬に強い痛みが…


何が起こったのか分からない。


「いつまでも逃げる気か!」


私を見る太郎の瞳は、純粋なんだけど、恐怖を感じてしまった。


頬から伝わる痛みは、次第に心へと伝わっていく。


頬を叩かれた痛みよりも、太郎に言われた言葉の方が、私には堪えた。


鋭いナイフで、心臓を一突きされたような。


「逃げてなんかない!」


やっぱり、嘘の言葉を発してしまう私。