心の、ずっと奥

「サチ。帰ろう。」


小さな子供に言い聞かせるように、優しい声が、私の耳に入ってくる。


でも、私は、その優しい問いかけには、すぐに答えなかった。


黙ったままの私。


それ以上、何も言わない太郎。


時折、強く吹く風の音と、揺れるフェンス。


何を言えば、いいのか分からない。


でも、帰れない、帰りたくない気持ちが、私の中で暴れ出していく。