心の、ずっと奥

そして、私の耳元で囁く太郎の言葉で、私の中の時計は、静かにまた進み出す。


「わかんねぇよ。わかんねぇ。でもな?サチの苦しんでる姿なんか、見たくねぇんだよ。」



ずるい、太郎はずるいよ。


止まりかけていた涙が、瞳いっぱいに溢れ出て広がっていく。


だから、今、一番会いたくなかったんだ。


太郎に会ってしまったら、『迷う』って自分でも分かっていた。


覚悟を決めていたはずなのに……


屋上から飛び降りるより、今、抱きしめられてる方が辛いよ。


太郎の大きな胸に、私は顔を埋めて大きな声をあげて泣いた。