心の、ずっと奥

悲しい表情を一つも変えずに、私に向かってそう言った。


『素直になれよ。』

『素直になれよ。』


私の心は、頭の中は、一瞬にして、その言葉が埋めた。


「素直になれ?太郎に何が分かるのよ!知らないくせに…何も知らないくせに!」


激しく私は反論した。


痛い所をつかれた気分。一番、『自覚』している事を言われた。


立ち上がろうと、宙にブラブラ伸ばしていた足をコンクリートの上へと運んだ時……


太郎は、いきなり私の腕を掴み、そして、優しく


そっと、優しく、抱きしめてきた。


突然の事に、私の中の時計が止まって、呼吸するのも忘れるぐらいに。