いつの間にか俺の中にはアイツが溢れていた。

「先輩は好きな人いますか?」

唐突な質問に、お前が好きなんて冗談を言える訳でもなく軽く流した。

「やっぱり、彼女いますよね」

そりゃ彼女がいた時もあるし、好きな人だって…
でも好きになるのが怖かった。そんな自分とどんどんのめり込んでいく自分とがいた。


「どうして私なんか誘ったんですか?」

一緒にいたかったから…
そう笑いながら言ってみたけど

「なんか嬉しい」

まさかそんな言葉が返ってくるとは思わなかった。

また遊ぼうって約束しておきながらどこへ行こうか悩んでると

「どこへでもついていきます」

本当にどこでも一緒にいるようになってきた。

「急に馴れ馴れしくなるのは緊張します」

話し方の距離が縮まった気がしたが、まだまだ距離は遠く感じた。

「今があればそれでいいんです」

そう言っていたのに何を焦ってしまったんだろう…
あの時の笑顔が未だに記憶に残っている…