爆走ハラスメント〜ツンデレ生徒会と硬派な王子達

「よし、葉!俺の胸で泣け!ほら!」


秀一は両手を開いてみせた。少年なりに考えた、精一杯の慰め方だった。


それが分かる程、葉子も大人では無かった。葉子からすれば、秀一は問題を軽視しているように思えて腹立たしいだけだ。


「いい。」


葉子は不満気に言い放った。





この日以来、秀一は葉子が泣いたのを見た事がない。そして


「最低…。」


この言葉が時々頭を過(ヨギ)るのだ。


あの震えて泣いていた姿は、今でも秀一の胸を締め付ける。


「で、どうしよう。和葉の事。」


「俺は、何もしない方が良いと思う。」


秀一はハッキリとそう言った。


「もし噂が流れても、俺たちは知らないと突っぱねる。五条に直接聞いてくる奴がいたら、本当の話をしてやる。そうしてるうちに、話はそんなに広がらず、その内忘れるよ。」


葉子はまだ心配そうだ。


「大丈夫だって。もし広がったら、その時考えよう。」


秀一は力強くそう言うと、葉子の肩に手を置いた。


葉子はまだ心配だった。