どれだけ泣いたのだろう

そんなことしても

もう湊は帰ってこない

もう二度と

彼の笑顔を見ることもできない


ふと短刀に手を伸ばした

ゴム製の

偽物



本当は

湊を殺すなんて…

これっぽっちも考えていなかった


そんなことできるはずもない


どうしてずっと想っていた人のことを

殺すことができるだろうか




震える手で

湊の手に触れる

強く握りしめられている短刀を離そうと、手を開いた瞬間

彼の手から零れおちる短刀




「…これ?」