綾乃がぼんやり町並みを見ていると、玄関口に備えられたインターフォンが軽やかに鳴った。
宅急便だろうか、あるいは何かの勧誘だろうか、と迷う間もなく、
「母さーん、あたしー!いるんでしょー?」
と、綾乃も良く知った声がインターフォンを通して部屋中に響き渡った。
綾乃の姉であった。
綾乃よりも3つ歳上のこの姉は、11年前に嫁ぎ、夫と二人の子どもと4人で、同じく町田市内に居を構え暮らしていた。
子どもが二人とも小学校に上がり少し手が離れた事から、最近になって平日の昼間だけパートに出ているのであるが、時間を見つけては、こうして実家に顔を出していた。



