***** 
 

 夕刻から藤堂は、吉田不動産の社長から電話で呼び出されていた。

 呼び出されたといっても、それは仕事ではない。

 広い付き合いの中で地元の漁業関係者も少なくない吉田から、今夜も新鮮な魚をたくさん貰ったとのことで、夕食に招かれたのだった。


「たった三人暮らしの家にこんなに生魚を貰っても困るんだよ。
 だから藤堂君が来てくれると、本当に助かるんだ」


 それは確かに吉田の言う通りであった。

 三人暮らしの内、二人は女性なのであるから、鮮度が命の生魚を人数分以上に貰っても困るに決まっている。

 それが分かるから、今では藤堂も遠慮をすることなく、吉田の家で好きなだけ美味しい料理を味わうことができた。