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 ゴールデンウィークが明け 人の戻ったビジネス街は、まるで止めていた呼吸を再開させたかのように忙しく動き始めた。

 そうしてまるで何もなかったかのように再び繰り広げられる日常は、時に冷淡に感じられる程“普通”に過ぎていく。

 忘れかけていた「時間」という感覚を必死に取り戻しながら、人々はそれに取り残されないように必死でしがみついているようにも見えた。



 しかし以前より時間の、いや日にちの感覚すら持たない綾乃にとって、それは全く関心のないところであった。

 祥吾がこの世を去ってから、何度の昼と夜を繰り返したのかさえ――…。

 今朝母親に「今日は祥吾さんの初七日ね」と言われても、綾乃にはどこかピンと来なかった。


 気づけば祥吾の死から既に一週間が過ぎていた。

 初七日といっても告別式の際にその法要を済ませている事から、綾乃たちが古澤の家に呼ばれることはなかったのであるが、それがなんの意味を持つのか、綾乃の母親は自宅の仏壇に花やら白飯やらを供え、いつもより念入りに両手を合わせていた。