更にその様子を観察してみれば、仕事ぶりもなかなかのもので、普段の麻美からは想像できないほどにてきぱきと手を動かし、麻美の前に積まれたカルテはそこに長く留まる事もなくPCへと落とされ、みるみる内に患者たちへ渡る各種の明細へと変わっていく。


 それは日頃麻美の事が心配でならない父親が見れば、さぞかし喜びそうな頼もしい場面だ。




 そもそも吉田家で自由気ままに振舞う麻美であったが、決して誰かの下で働くことが嫌いというわけではなかった。


 働きはじめてから数ヵ月の内にも、ここでのメインの仕事となるレセプトコンピューターを要領よく使いこなせていたし、その社交的な性格もあって、顔なじみである地元の患者たちにと気さくに言葉を交わすのも楽しかった。
 

 なにより、ここは大きな病院と違って土日休みが守られており、診療報酬明細の提出期限の迫る頃を除けば、ほぼ毎日定時で帰ることができるのだから、麻美の望む都会的な華やかさなどは少しもないものの、これはこれで受け入れることができた。