海外事業部から戻った真理江は佐竹に謝れたことで幾分と心がすっきりしたのか、一見すれば普段の明るさを取り戻していた。
そのような真理江の様子に、冴子は真理江が佐竹との間でどのような会話が交されたのであろうと気にはなったが、それを真理江に聞くことはしなかった。
二人で並んで座り、真理江の仕事の仕分けをしながら、冴子は、
「なんだかこういう連休がある度に、自分が独りであることが身に染みて、本当に嫌だわ。
“幸せ”がこんなに手に入りづらいものだなんて、子どもの頃は想像もしなかった」
と小さく嘆いた。
「幸せって――…結婚のこと?」
真理江は少し驚いたように問い返す。
すると冴子は、
「結婚っていうか、もうそれ以前の問題よ。
私も恋がしたいわ」
と答えた。



