「私も真理江みたいに生まれたかったな」
冴子は思わず呟いた。
「何よ、冴子ったら。それは嫌味?
ふふ! さ、仕事しなくちゃ!
あぁ~、午後からは会議に出なくちゃいけないのに、それまでに片付くかしら?
9連休なんて貰ってしまったから、落ち込んでいるヒマもないわ」
席に座り、舌を出してしかめっ面をして見せる真理江に、
「真理江の9連休は事故みたいなものじゃない。
私で出来るものは手伝うから。
こっちは随分と片付いてるの」
なんだかんだと思うところはありつつも、冴子は助け船を出さずにはいられなかった。
そもそも女性事務員の多くが有給を使い9連休をとっていたから、回りを見回してみても手が空いている者は、月初も出勤していた自分くらいしか居そうにない。
それに、午後からの会議というのが、部長クラスも出席する重要なものである事を、冴子も当然に知っていた。
真理江がこの連休中フラフラと遊んでいたのであれば話は別であるが、そうでない事を誰よりも知っている冴子は、昨晩よろしく放っておけるはずなどないのだった。



