これを聞いた佐竹は、

「さすがなもんか!様子伺いのメールばっかりさ。
 忘れてるわけじゃないっつーの!
 これだから日本はイヤなんだよ!」

といって、佐竹からの回答を待つ得意先から送られた「現在の進捗を伺うだけのメール」を開きながら、珍しく中瀬に愚痴をこぼした。


「へぇ、みなさん心配症なんですね!」

「な?失礼な話だろ?」

 佐竹は憤慨した様子で中瀬にそう言うと、それらのメールに返事を入れることもせずに、とっとと受信フォルダを閉じてしまった。

 そして取り急ぎの仕事の資料だけを抱えると、休み明け特有の騒がしさから逃れるように、フロアの片隅に設けられた無人の商談スペースを陣取った。

 というのも、商談スペースには取扱いのある商品のカタログ類がそろっており、また電話など面倒なツールが近くにないのも、佐竹には都合が良かったのだった。