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 同じく五月六日の夕刻。
 東伊豆にある吉田不動産の母屋の前に、見慣れたRV車が静かに止まった。

 慣れた様子で駐車を済ませ車から降りてきたのは、小脇に箱を抱えた藤堂であった。

 藤堂は門まで進みインターフォンを鳴らすと、それに応えた吉田の妻に、

「藤堂です。突然すみません。
 今日、社長はいらっしゃいますか?」

と尋ねた。

「あら、藤堂さん!ちょっと待っててね」

と妙子からいつも通り明るい応対を受けた藤堂は、その場で足踏みをしながら落ち着かない様子で待つ。

 やがてドアが開かれると、そこから出てきたのは、社長ではなく、今インターフォン越しに対応した妙子であった。