綾乃は寝室に入ると、髪をほどき、窮屈に着付けられていた喪服を脱ぎ始めた。

 そしてベッドの脇に備えられたクローゼットを開くと、祥吾が日常着にしていたのであろうグレーのシンプルなスウェットを取り出した。


 葬儀の間中ずっと息苦しさから開放されたがっていた綾乃の身体を、祥吾のグレーのスウェットが包む。

 それでも恐ろしい程の息苦しさが綾乃から離れることはなかった。