その道から何度となく見つめた祥吾の部屋の窓。

 しかしその奥に在る実際のその部屋は、真理江が未だ踏み入れたことのない空間であった。


 それは祥吾がそこに真理江を招き入れる事を嫌がったのもあるが、真理江は真理江で、祥吾が未だ既婚者である事や、今はそうでないとは言っても、かつて祥吾と妻が共に選んだ場所だという事などもあって、積極的にそこを訪ねようとは思わなかったから。

 正直に言えば、真理江はそこ入る事が怖かった。



 いつも通りに視線を向ける。

 いつも通りの、薄暗い部屋。



――…と、


 閉められたカーテンの奥で、人影のようなものが動いた気がした。


「え?」


 真理江にとって、全く以って予測外の事態が起きた。