「彼女みたいな子が羨ましいわ。
 なかなかそんな風に思った事を口にして言えないものよ」

 中瀬の後ろで呟きながら、真理江は心からそう思っていた。

「僕もマイペース人間だから。
 どちらにせよ、お互いがそれぞれの選択をした結果なんですよね」


 先月別れたばかりだというのに、自発的な選択による別れを経た彼は、惨めなところなどひとつもなくて、それどころか未来に向けて駆り立てられている情熱のようなものが中瀬の瞳の奥で静かに揺れていた。


 街に灯が灯り始めた頃、再び中瀬の車に乗り込むと、真理江と中瀬が今を生きている地、東京への帰路についた。







~『ベイビーたちの夕暮れ』真理江 ~