祥吾をどこか突き放したい気持ちの一方で、祥吾からの連絡を待つ自分の存在は未だ大きいままである。

 今日が連休初日であるから、「やっと掛けてくれた!」と心の内で真理江の期待は膨らむのも当然の事だろう。


 焦る気持ちで携帯電話を手に取り、電話を掛けてきた相手を確かめると、それは今一番真理江を心配しているであろう冴子からであった。


「祥吾からはもう、掛かって来ないかもしれないな……」

 真理江は冴子に電話を掛けなおすことをせず、ベッドメイキングを済ませたばかりのベッドの上に、仰向けで倒れ込んだ。


 何故なのだろう、昨日まで止まる事のなかった涙が、今日は少しも零れる事はなかった。







〜『交差するベイビーたち』 真理江〜