既婚者である祥吾にとって、やはり自分は頼れない他人でしかなかったのであろうか?
これまで祥吾が過ごしやすいように努めてきたつもりであったのに、それが祥吾には伝わっていなかったのかと情けなく思うのと同時に、もう一人の自分が容赦なく嘲りの笑いを浴びせかけた。
思えば真理江の生活は、いつしか祥吾中心の生活になっていた。
夫婦であれば共通の目的に向かい共に頑張れたのであろうか、しかしながら所詮は既婚者である祥吾を相手に、真理江はどうすればいいのか分からない、処理しきれない感情もたくさんあった。
しかし、それを見て見ぬふりをしたのは、紛れもなく自分自身なのであるが……。
祥吾のことはもちろん愛している。
これが永遠の別れになるとは考えたくはない。
しかし今は、祥吾が自らの存在する場所を自分に伝えては来ないという事実を受け入れるしかない事を、真理江は悟った。
そして祥吾の口から自分が必要であると聞くまでは、こちらから行動を起こすのは止めようと、真理江は静かに心に決めた。
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