見合いは午後1時から、熱海駅からタクシーで5分もかからないところにある老舗の料亭で予定されていた。


 彰人の家は料亭より更に20分くらい車を走らせたところにあって、見合いの前に一旦家に寄る事も可能なのだが、見合い前に母親と顔を合わせれば、いちいちと面倒な話を仕掛けられるに違いなく、それはこのところずっと残業続きであった彰人にとって、それだけはどうしても拒否したかった。


 改札口で頭を掻きながら立ち尽くす彰人を、邪魔だと言わんばかりに観光客がぶつかりそうになりながら避けて通り抜けて行く。



 約束の時間まではゆうに一時間はあることから、彰人はひとまず駅前のファーストフードの店に入る事を選択した。