電話を切った冴子が顔を上げると、不安げな表情をした真理江がいた。


「――…祥吾、どうしたって?」

 冴子は戸惑いながら、今聞いた全てを真理江に伝えた。


「祥吾さん、体調を崩して、長期休暇をとっているんですって」

 無理もない、真理江の顔には先程とはまた違う蒼白の色が浮かんだ。

「病気? 祥吾が? 一体どうしたの?」

 真理江は縋るような目をして、冴子に矢継ぎ早に問いを投げた。


「――これ以上は教えては貰えないわ。
 おめでたい理由ならともかく、病気では……」

 ふたりの間に沈黙が流れた。

 崩れるようにその場に座り込んでしまった茫然自失の真理江の手を握り、冴子まで虚しい気持ちで一杯になるのであった。





〜『ベイビーたちの現実』 冴子〜

.