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 広報企画部。
 慌しい部署を横目に、ここにはむしろ普段よりもゆっくりとした時が流れていた。

 事実社員の中には有給休暇を取って9連休にしている者も多くて、静まり返ったフロアには空いた席も目立つ。


 しかしいつも通り、朝から安藤冴子の姿はそこにあった。
 と言っても、今日に限っては決して仕事が忙しいからというわけではない。

 冴子くらいの年齢になると友人ともなかなか予定を合わせるのが難しいもので、9連休を貰ってもかえって退屈なだけあったからだった。


 そこで同じく休みをとっていない真理江と二人、今夜はおいしいアジアン料理でも食べようと、都内高層ビル内の有名ダイニングに数日前から予約をいれていた。

 おいしいアジアン料理もさることながら、先週の新人歓迎会で知り合った佐竹の話で盛り上がろうと、冴子はむしろそちらを楽しみにしていたのであるが――…。


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