ふと中瀬の脳裏に、あの日自分の隣に座っていた真理江の顔が浮かんだ。

「僕の隣にいらした小林さんという広報の女性、とてもお綺麗な方でしたね」

 中瀬は、佐竹が付き合うとすれば、彼女のような女性なのかもしれないと思った。


「あぁ、彼女ね。
 広報辺りでは有名人らしいぞ。才色兼備のマドンナだって言ってな」

 佐竹の言葉に、中瀬は驚いた。

「そうなんですか!
 僕たち、そんな方とご一緒させて貰っていたんですね!」

 そして、

「でも…小林さん、金曜日は何か疲れていらっしゃるようでしたね?」

と、付け加えた。


 しかし、席が離れていた佐竹には感じるものがなかったようで、

「そうか? どこの部署も月末は忙しいからな」

と、あまり気に留めてはいない様子であった。