いつかは自分も海外に立ちたい。

 中瀬もここにいる他の社員同様に、そんな夢を持って入社を果たしていた。


 そんな中瀬の視線の先には、いつも、部署の一画に設けられた電光掲示板があった。

 そこには世界地図と各国の時間を表す時計とが浮かび上がり、各拠点のある位置にはここから赴任して行った社員たちの笑顔の写真が貼られている。

 それを見る度に中瀬の胸は踊り、活力となった。



「大丈夫だ、お前ならすぐに行けるよ」

 ついこの間までアメリカはシアトルのある位置に写真が貼られていた佐竹が、中瀬に声を掛けた。

「――だといいんですけど」

 中瀬は小さく笑った。

「試験勉強はやっているのか?」

「はい、一応は……」


「そうか、頑張ってるんだな。
 実際、現地では ある程度の英単語が分かれば何とかなるもんなんだけどな」


 佐竹はにこやかに笑った。




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