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 今日は伊豆でも朝から強い雨が降り続いていた。

 麻美の家の庭から見える相模湾一帯もグレーの雲に覆われ、海と空とがぼんやりと境なく見える。


 昼間だというのに灯りが点けられた家の中では、何やら難しい顔をした麻美が部屋の脇に備えられた姿見の前に立ち、写る自身の姿を何度となく角度を変えては見つめている。


「これもパッとしないわねぇ」

 そう言ってはクローゼットを覗き込み、次々と着替えては姿見の前に立ち、という動作を繰り返していた。


 そう、麻美は次の連休に控えた見合いに着ていく洋服を選んでいたのだ。